音声要約:米SECのInnovation Exemptionは、トークン化されたNMS株式の取引を2031年9月17日まで試す条件付き免除です。暗号資産全般の規制緩和でも、株価連動商品の全面解禁でもありません。
チェーンは24時間動いても、株式市場は勝手に24時間化しません。コードが約定を処理できても、誰を参加させるか、どの株を扱うか、原株が止まったときに誰が取引を止めるか、配当や議決権を誰が渡すかは別に決めるからです。この記事では、今回変わった規制上の扱い、トークンの残高を株主権へつなぐ仕組み、商品を選ぶ前に読むべき開示の三点をたどります。
| 制度上の変更 | 変更されない規律 |
|---|---|
| 条件を満たすTSVを取引所の定義から免除 | 証券として反詐欺・反市場操作規定を適用 |
| 一定の自己資本流動性供給者をディーラーの定義から免除 | 登録取引所そのものになったわけではない |
| 期限・銘柄数・出来高を限定して取引を実証 | 恒久規則や全市場の24時間化ではない |
Innovation Exemptionは何を変えたのか
米証券取引委員会(SEC)は2026年9月17日、トークン化されたNMS株式を扱うTokenized Securities Venue(TSV)に、一時的かつ条件付きの免除を与える命令を公表しました。制度の概要はSECの公式発表、定義と全条件は原命令(Release No. 34-106402、File No. 4-927)で確認できます。
NMS stockの法的な範囲は「NMS securityのうちオプション以外」です。企業の普通株だけを指す言葉ではなく、今回のTier 1には条件を満たす一定の上場取引型金融商品(ETP)も含まれます。一方、rights(新株引受権など)とwarrants(ワラント)は適格対象から除外されます。免除の対象は証券全般ではなく、この範囲の証券をトークン化して扱う特定モデルに限られます。SECはExchange Act第36条(a)(1)を根拠に、TSVを取引所の定義から、自己資本で対象プールへ流動性を供給する一定の参加者をディーラーの定義から免除しました。株式そのものを証券規制の外へ出したわけではありません。
取引基盤は、公開・パーミッションレスの分散型台帳(DLT)上に置かれます。一方、TSV上のAMM流動性プールへ入れる参加者は運営者が許可します。AMM(Automated Market Maker)は、注文板で相手注文を探す代わりに、流動性プールとあらかじめ定めた規則を使って交換条件を提示する仕組みです。プール残高を使う一定積型などが典型ですが、原命令は外部価格ソースや市場データを使う方式も想定しており、すべてが残高比率だけで価格を決めるわけではありません。公開された道路の上に、入場審査のある市場を設けると考えると二つの性質を区別できます。
有効期間は「おおむね5年」ではなく、2026年9月17日から2031年9月17日までです。SECは同時に意見を募集していますが、2026年9月21日時点で調査資料上はコメント締切の表示がありません。期限後も続けるには恒久的なルール形成など次の措置が要り、今回の命令だけで継続は決まりません。
判定フロー前半:資産・権利・発行構造
対象判定は、資産→権利→発行構造→発行会社の意思→取引場所→規模の順に進めます。この章では前半の四項目を扱い、取引場所と規模は「判定フロー後半」で続けます。ニュースを理解する最短ルートは、画面上の価格より先に法的な中身を見ることです。SECスタッフは2026年1月の声明で、トークン化証券を、所有記録の全部または一部が暗号ネットワーク上にある証券として整理しました。そのうえで、発行体または代理人がトークン化する型と、発行体と関係のない第三者がトークン化する型を区別しています。
発行体主導型では、会社や移管代理人が公式株主記録とトークンを結び付けやすくなります。第三者型では、第三者が原株を保有し、トークン保有者へ権利を渡す構造などが考えられます。同じ「トークン化株式」という名称でも中身は同じではありません。会社に直接権利を持つのか、第三者への請求権を持つのかを確認します。配当の受取人と再分配の方法、議決権の行使方法も確認が必要です。
今回の免除は値動きだけをコピーした商品を対象にしません。対象トークンには原株と同等の配当・議決権などが必要です。「1トークン=1株相当」という表示だけでは足りず、誰が原株を保有し、株主名簿上の地位はどこにあり、配当や会社行為の情報がどの経路で届くかを確認する必要があります。
第三者型を扱う前には、TSVが発行会社へ30日前に通知し、異議の機会を与えます。CoinDeskの原命令解説は、この通知と拒否、出来高上限の実務を報じています。技術的にトークンを作れても、会社が無条件に自社株の新市場への掲載を受け入れさせられるわけではありません。Axiosも、企業が第三者トークン化をどの程度受け入れるかは未確定だと報じています。
100ドル相当の購入で分かるTSVと許可制AMM
架空の投資家が100ドル相当を買う場面を5段階で追います。
①参加審査:TSVがアクセス基準を定めます。本人確認、制裁対応、利用地域などを、各TSVの手続と適用法に応じて審査し得ます。公開チェーンのウォレットを持つだけでは参加できません。
②見積価格:利用者インターフェース(UI)が数量、手数料、許容する価格変動を示し、注文をチェーン向け命令にします。表示責任はUI提供者とTSVの開示で確認します。
③署名:投資家がウォレットで内容を確認して署名します。自己管理ウォレットは設計の一例です。鍵管理の責任分配は、ウォレット形態と各TSVの利用規約によります。
④AMM約定:TSVが認めたプールで、公開されたスマートコントラクトが交換規則に従って処理します。流動性供給者は交換資産を用意します。
⑤権利・決済記録:支払い資産とトークンが移った後、関係者が公式記録や原株保管と結び付けます。関係者は、発行会社、移管代理人、第三者発行者、保管者などです。結び付け方や決済方式は商品ごとに確認します。
注文板で買い注文と売り注文を突き合わせる方式とは違います。プールが薄ければ、一つの注文が残高比率を大きく変え、画面で見た価格と約定価格の差も広がります。原株との価格差は裁定の動機になりますが、原株とトークンの交換時間、手数料、取引上限が摩擦になるため、同じ価格へ瞬時に戻るとは限りません。
取引時には表示価格だけでなく、手数料、許容する価格変動、注文経路も読みます。SECスタッフの自己管理ウォレット向けUIに関する声明は、手数料、利益相反、経路、サイバー対策、MEVを含む情報利用リスクを開示論点に挙げました。MEVとは、取引の並び順を変えるなどして第三者が利益を得る仕組みです。この声明は委員会規則ではなく、法的拘束力のないスタッフ見解です。
約定後、株式トークンと支払い資産が移ります。証券の引き渡しと代金支払いを条件付きで結ぶDvP(Delivery versus Payment)は想定される決済モデルの一例で、原命令がすべてのTSVに共通の決済仕様として義務付けているわけではありません。採用された場合でも、片方だけが先に渡る元本リスクを抑えられる半面、決済資産そのものの信用、換金性、システム障害までは解消しません。即時の個別決済がネッティングを減らし、参加者の必要流動性を増やす場合もあります。ネッティングとは、複数の受取額と支払額を相殺し、最終的な差額だけを決済する方法です。
最後に、ウォレット残高を株主権へ接続します。発行体主導型なら発行会社や移管代理人が公式記録とトークンを結び付けます。第三者型なら、原株を保管する主体、トークン発行量との照合、配当の受取・再分配、議決指図の経路を契約と運用で整えます。オンチェーン移転時刻と公式記録の更新時刻が違うとき、基準日の権利者をどう決めるかも商品設計の一部です。
ここには複数の責任者がいます。TSVは市場と参加アクセスを運営し、流動性供給者は交換資産を置き、UI提供者は命令作成の入口を担います。発行会社、第三者発行者、保管者、移管代理人はトークンを権利と公式記録へつなぎます。スマートコントラクトは決められた処理を自動化しますが、これらの主体を置き換える万能の台帳ではありません。
原命令が設けた6つの安全柵

1.期限と主体
免除は2026年9月17日から2031年9月17日までです。TSVは米国人でなければならず、自らがSEC登録取引所ではないことを利用者へ開示します。期限付き免除は無規制を意味せず、反詐欺・反市場操作規定は引き続き全面的に適用されます。
2.二段階の銘柄・出来高上限
Tier 1は最大75銘柄で、各対象株式についてTSVの前月平均日次出来高を原株の前月平均日次出来高の0.25%までに制限します。Tier 2は最大250銘柄、同2.5%です。銘柄枠と各銘柄の出来高比率を別々に見る設計であり、「上限がある」という抽象条件ではありません。商品を見る際は、どちらのTierで運営され、どの公表値を分母に比率を算定したかを原命令とTSVの開示で照合します。
3.権利、発行会社への通知、レバレッジ禁止
対象トークンには同じクラスのNMS株式と同等の会社持分、配当、議決、清算時の残余財産などが必要です。linked security(別の証券の値動きに連動する証券)やsecurity-based swap(証券価格などを参照して差額を交換する契約)といった、値動きだけを作る合成的エクスポージャーは除外されます。非関連第三者がトークン化する場合、発行会社が通知を受けてから少なくとも30暦日は取引を始められません。発行会社が30日以内に異議を述べれば、そのTSVでは扱えません。主体別にいえば、原命令はTSVによる融資活動(financing activities)、TSV上にある資産の借入・担保設定、購入目的の信用供与を禁じています。
4.原株の売買停止との同期
主たる上場取引所(primary listing exchange)で原株がhaltまたはsuspensionになれば、TSVも対象トークンの取引を同時に止めます。ブロックチェーン自体が稼働していても、市場機能には停止命令を反映させる必要があります。開示で見るのは、停止情報の検知者、コントラクトまたはアクセス層への伝達方法、再開の判断者、単なる送付機能まで止めるかという境界です。
5.公開・監査可能なコード
取引スマートコントラクトは公開され、監査可能でなければなりません。ただし、公開や一度の監査は無事故の証明ではありません。監査対象の版、監査後の変更、更新権限、管理鍵の保管、複数者承認、緊急停止、資産回収の手順までが障害時の実効性を左右します。
6.取引データと帳簿
TSVは過去30日分の米ドル建て機械可読データを公開し、取引後10分以内に更新します。項目には価格、数量、UTC時刻、売買の方向、プール情報、スマートコントラクトのアドレス、日次出来高、日末のプール規模が含まれます。公開通知、帳簿記録、技術的安全策も条件です。これにより、上限を守ったか、原株との価格差やプールの厚みがどう変わったかを外部から検証できます。
六つの条件は、実験の規模、権利、異常時、コード、観測データを別々に縛ります。どれか一つを満たせばよいのではありません。狭い範囲で実取引を行い、測定可能な記録を残し、その証拠を恒久制度の判断へ回す構造です。
判定フロー後半と、運用を支える4層
1.公式な株主記録と会社行為
株主には配当や議決などの権利があるため、誰がどの株式を保有するかを正確に記録する仕組みが欠かせません。移管代理人は証券の発行・移転と保有者記録を支えます。SECは2026年9月1日、ブロックチェーン利用を反映する移管代理人規則の近代化案を公表しました。規則案全文では、ブロックチェーンを公式記録に使う場合の統制、正確性、保存、責任が論点です。
台帳にアドレスと残高があっても、発行の根拠や情報の正しさは自動保証されません。Crypto Task Forceへの公開提出資料は、事実ごとの出典、時刻、証拠種別、履歴保存の必要性を指摘します。提出者の意見ではありますが、「改ざんしにくい記録」と「正しい情報源」は別だという注意を示します。
2.証券と代金の決済
株式を渡したのに代金が届かない事態を避けるには、証券と支払いを条件付きで同時に動かすDvPが重要です。BISの報告は、資産とマネーを同じプログラム可能基盤で扱う便益を論じます。一方、BISの証券決済分析は、DLTが照合を減らし決済期間を短縮し得ても、信用・流動性・法的・運用リスクは残るとしています。即時の個別決済はネッティングの便益を減らし、必要流動性を増やす場合もあります。
既存インフラも準備を進めています。DTCCは銀行、証券、取引所、運用会社、暗号資産企業を含む50社超とのサービス開発を公表し、同年7月にはDTC保管資産を使う本番取引を発表しました。取引枠と保管・決済基盤は別の仕事として並行しています。
3.報告と市場監視
公開チェーンに履歴が残っても、監視が不要にはなりません。アドレスの主体、複数アドレスの関係、原株市場とTSVをまたぐ不公正取引の判断には台帳外の情報が要ります。FINRAの基礎資料も、DLT上のNMS株式には取引報告や監査証跡が論点になると整理しています。
判定フロー後半:取引場所と規模
前半の四項目を通過したら、TSVという取引場所と実験の規模を確認します。取引場所は、公開DLT上にありながらAMMプールへの参加が許可制で、登録取引所ではないと開示される市場です。規模は「安全柵」のTier別銘柄数と出来高比率で判定します。通知済みで異議がないことは、発行会社による推奨や個別投資家への適合性を意味しません。
4.会社行為を権利者へ届ける運用
株式では、残高の移転だけでなく会社行為を処理できなければ「同等の権利」は完成しません。現金配当なら、基準日に誰を権利者と判定し、発行会社から誰が受け取り、どの資産・為替・手数料でトークン保有者へ渡すかを決めます。議決権なら、会社から届いた議案を誰が伝え、トークン保有者の指図をいつまでに集め、公式な議決へ反映するかが要ります。株式分割では原株側の比率変更とトークン数量を同期させ、合併や公開買付けでは選択肢や対価を伝える経路が必要です。
TSVでの約定、ウォレットへの移転、公式記録上の権利者確定は別の処理です。会社行為では、原株側の基準日時点とオンチェーン移転の時刻がずれた場合の優先規則、端数処理、誤配当の訂正、議決指図の締切を商品説明書で確認します。公開台帳の耐改ざん性は、原株保管の事実や入力情報の正しさを自動保証しないため、記録の作成者と訂正権限も必要です。
第三者型では、オンチェーンのトークン総量と保管原株数の照合も欠かせません。数が一致していても、原株が誰名義で、他の債権者から分離され、トークン保有者が破綻手続きでどの権利を持つかは契約次第です。反対に発行体主導型でも、管理鍵の侵害や誤移転をどう訂正するか、本人確認済み保有者とアドレスの対応をどう更新するかという運用問題は残ります。方式名だけで優劣を決めず、公式記録、契約、技術制御が同じ権利者を指しているかを見ます。
4つの指標で5年間の実験を検証する

原命令が求めるデータは、単なる取引履歴の一覧ではありません。価格と数量を組み合わせれば取引金額を追え、UTC時刻と売買方向があれば、原株市場の動きや売買停止時刻との前後関係を調べられます。プール情報、コントラクトアドレス、日末プール規模は、どのコードと流動性が約定を支えたかを結び付けます。日次出来高はTierごとの比率上限を監視する基礎になります。
1.価格差
まず価格形成を見ます。同じ時間帯の原株価格とTSVの約定価格を比べ、差の大きさだけでなく、どれほどの数量で差が広がったか、元へ戻るまでどれほどかかったかを追います。小さな注文でも差が大きければプールの薄さが疑われます。大きな差が短時間で解消していても、手数料と原株・トークン間の移転コストを差し引いた後に裁定が機能したかは別に考えます。
2.流動性
次に集中度と安定性を見ます。日次出来高が増えても、少数のプール、流動性供給者、時間帯へ偏っていれば、撤退や障害の影響は大きくなります。日末プール規模の推移と個々の取引量を重ねれば、流動性が減った局面で価格への影響が拡大したかを読みやすくなります。公開データだけで流動性供給者の実名や関連関係まで判定できないため、TSVの帳簿と監視情報を合わせる必要があります。
3.停止同期
「安全柵」で述べた停止同期は、原株の停止時刻とTSVの最終約定・再開時刻を比べて検証します。単純なトークン送付と市場での売買が別機能なら、転送記録だけで違反とは判断できません。停止対象だった機能を運営者の手順と照合します。
4.会社行為
価格・数量データだけでは、配当、議決、分割、合併の処理品質は分かりません。発行会社の基準日、TSVの権利者確定、トークン保有者への通知・交付の各時刻を照合し、遅延、端数、訂正件数を追います。これは原命令の公開取引データだけで完結しないため、商品開示、移管代理人または保管者の記録も必要です。
データの更新は取引後10分以内、閲覧範囲は過去30日分です。そのため長期分析を行う主体は、公開期間中に機械可読データを継続取得する必要があります。外部分析だけで法令順守を最終判断できるわけではありませんが、価格差、上限、停止、流動性という実験目的を同じ形式で追える点に意味があります。処理件数の多さだけを成功指標にせず、価格の一貫性、停止の確実性、障害後の回復まで読み取るべきです。
資料ごとに確認できる事実を分ける
四つの層は、確認資料も異なります。公式記録との接続は商品説明書、移管代理人または保管者の規約で確認し、会社行為は基準日、通知日、指図期限、交付日の記録で確かめます。決済は、約定記録だけで完了とみなさず、証券トークンと支払い資産の両方が移った時刻、失敗時の取消し条件、決済資産を換金できる経路を見ます。監視は、公開チェーンの履歴に加え、TSVが保有する参加者情報、注文経路、複数アドレスの関連情報が必要です。公開データで見えない項目があること自体は直ちに不備ではありませんが、誰が保存し、SECの検査や事故調査で提示できるかは区別して確認します。
証拠の優先順位もそろえます。制度の対象と条件はSECの原命令、個別TSVの運用はその公開通知・利用規約・コード、権利の内容は発行・保管契約、実績は機械可読取引データと会社行為記録で確認します。報道記事や画面上の宣伝文句は入口にはなりますが、権利や免除条件の根拠そのものではありません。記載が食い違う場合は、対象期間と文書の更新日を見たうえで、原命令と個別契約へ戻ります。
また、同じ出来事を資料間で結び付けられるかも重要です。取引データのコントラクトアドレスと公開コードの版、売買停止の時刻と運営者の告知、会社行為の基準日と公式記録の権利者を対応させます。識別子や時刻の基準が一致しなければ、各資料が公開されていても検証は難しくなります。UTC表示、銘柄識別子、コントラクト更新履歴、訂正履歴が継続して残るかを確認することで、単なる閲覧可能性と、後から同じ結論を再現できる監査可能性を分けて評価できます。
便益には、対応する条件と代償がある
| 期待される便益 | 成立条件・残るリスク |
|---|---|
| 履歴の透明性:公開台帳と機械可読データで、取引規則や履歴を検証しやすい | プライバシーと監視:アドレスの実在主体や複数アドレスの関係は台帳だけでは分からず、本人確認情報と市場監視が要る |
| 決済の短縮:証券と代金をDvPで条件付き移転し、照合を減らせる可能性がある | 流動性の手当て:即時グロス決済はネッティングの便益を減らし、決済資産を先に用意する負担を増やし得る |
| プログラム可能性:売買、移転、会社行為を共通ルールへ接続できる | コード依存:不具合、更新鍵、オラクル、ブリッジ、ネットワーク混雑が新しい障害点になる |
| 新しいアクセス経路:公開DLT上で既存の注文板と異なる取引モデルを試せる | 参加制限:TSVの審査、居住地、銘柄枠、出来高比率があり、誰でも自由に売買できるわけではない |
便益は免除の公表時点で達成済みではありません。公式記録、保管、決済資産、市場監視が相互運用し、十分な流動性と復旧手順を備えて初めて現れます。BISの証券決済分析も、DLTが照合削減や決済短縮に寄与し得る一方、信用・流動性・法的・運用リスクは残ると整理しています。
第三者型では相手方リスクも加わります。チェーン上のトークンが正常でも、原株を持つ第三者や保管者が業務停止・破綻すれば、権利実現が難しくなる可能性があります。原株が顧客資産として分別されるか、トークン保有者がどの順位の請求権を持つか、別管理者へ移せるかは、コードではなく契約と法的構造の問題です。
価格面では、薄いプールほど注文による価格影響が大きくなります。出来高上限は既存市場への影響を抑える安全柵であると同時に、プールを厚くする制約にもなります。コードどおりの約定、原株と近い価格での約定、十分な換金性は別の評価軸です。
FSB報告は、市場が小規模でも、拡大時には流動性、レバレッジ、資産価格、相互接続、運用上の脆弱性が重要になると指摘します。BIS・FSIの要約が挙げるオラクル(外部価格などを台帳へ伝える仕組み)、カストディ(資産の保管)、ブリッジ(異なる台帳間をつなぐ仕組み)への依存も、処理を組み合わせやすくする便益の裏側です。
商品ページで答えを探す6つの質問
- 何の権利か? 商品説明書の「権利」「会社行為」欄で、配当、議決、分割、合併、清算時の扱いを確認します。ロゴやティッカーは発行会社の承認を証明しません。
- 誰が記録を合わせるか? 「発行・保管」「利用規約」の欄で、公式記録の管理者、原株数との照合、資産分別、破綻時の請求順位、移管方法を探します。
- どの実験枠か? TSVの「対象銘柄」「Tier」表示で、運営者、参加資格、銘柄、出来高上限を確認します。登録取引所ではないとの表示も読みます。
- 総費用はいくらか? 注文確認画面の「手数料」「スリッページ(表示価格と約定価格のずれ)」で、ネットワーク・換金費用、決済資産、注文経路まで確認します。
- 止まったらどうなるか? 「障害対応規約」「資産回収」「鍵管理」で、停止判断者、連絡先、再開条件、損失負担、管理鍵と鍵紛失時の手順を探します。
- 検証用データはあるか? TSVの「公開データURL」で、価格、数量、UTC時刻、方向、プール、コントラクト、日次出来高、日末プール規模を取得できるか確かめます。日本での提供可否、国内法、税務は別途公的情報で確認します。
公開台帳で残高が見えることは、裏付け資産、契約、社内記録まで見えることを意味しません。また「Innovation Exemption対応」という表示も、個別商品の安全性や投資家への適合性を保証しません。この六問に答える資料が見つからない場合、利便性を試す前に情報不足そのものをリスクとして扱えます。
制度変更も観測条件に含める
第一は、SECの意見募集と条件の修正です。2026年9月21日時点で、調査資料上はコメント締切が設定されていません。今回の命令は恒久規則ではなく、追加説明や提出意見によって対象範囲、上限、開示、運用条件が変わり得ます。
第二は発行会社の選択です。どの会社が第三者型を受け入れ、どこが異議を述べるか。発行体主導型が増えるか。同等の配当・議決権と会社行為を実際にどう実装するか。銘柄数だけでなく権利の渡し方を比較する必要があります。
第三は他の制度層との接続です。移管代理人規則案、DTCC、既存取引所、ウォレットUIは別のレイヤーです。CPMIの整理が示すように、トークン化は発行から決済までを変え得ますが、安全性と効率性にはガバナンスとリスク管理が欠かせません。
政策背景については、議会での市場構造法案の停滞後にSECが行政対応を示したとのBloomberg Lawの報道があります。ただし行政上の免除は制定法や恒久規則と同じではありません。根拠、期間、変更可能性を区別して追う必要があります。
この評価では、技術が動いたかだけでなく、上限内で価格形成が保たれたか、会社行為が期限どおり届いたか、停止と再開が原株市場に同期したか、障害時に資産と責任の所在を追えたかを分けて見ます。公開コード、公開取引データ、公式記録、契約書はそれぞれ異なる事実を示すため、一つの資料だけで安全性を結論づけることはできません。
まとめ:次に見るのは実データ
Innovation Exemptionは、証券規制を外す制度ではなく、対象と規模を絞った期限付きの市場インフラ実験です。投資家は名称ではなく、権利、公式記録、保管、費用、障害対応を商品資料で確かめる必要があります。今後は、価格差・流動性・停止同期・会社行為という四つの実績が、恒久制度を検討するための材料になります。
本記事は制度理解のための情報であり、特定の金融商品や取引を推奨するものではありません。