- 利用者の画面では、広告の表示、利回りの説明、DeFiへの接続窓口、扱えるステーブルコインが変わる可能性があります。
- 変更候補は、①広告、②費用・利益相反、③ステーキング・貸借、④DeFi接続、⑤ステーブルコイン、⑥トークン分類の6論点です。
- 2026年9月30日に公表されたESMAの回答は提言であり、現時点の法改正ではありません。
- 投資家保護の強化とともに、白書通知や重複認可を簡素化する案も含まれます。
- 次の大きな節目は、欧州委員会が報告をまとめる期限の2027年6月30日です。
取引所の広告で報酬関係が見えやすくなる、ステーキング画面に費用や損失可能性が詳しく出る、アプリ内のDeFi接続窓口が規制対象になる、EUで選べるステーブルコインが変わる――今回の見直し提言は、採用されればこうした日常の操作や選択肢に影響し得ます。
ただし、ESMA(欧州証券市場監督局)が示した内容は施行済みの新ルールではなく、欧州委員会の協議に対する勧告です。この記事では、ESMA、EBA、ESCB(欧州中央銀行制度)、業界団体の資料を基に、現行ルールと6つの変更候補を分け、初心者の個人利用者が今確認できる点を中心に整理します。事業者固有の手続きは補足として分離します。
| 資料・主体 | この記事での読み方 | 法的な効果 |
|---|---|---|
| 現行MiCA・委任法令 | 現在の義務を確認する根拠 | 適用日を迎えた条文は義務 |
| 欧州委員会の協議文書 | 見直しの質問と検討範囲 | 質問だけでは義務は変わらない |
| ESMA・EBA・ESCBの回答 | 監督・金融安定側の提案 | 回答だけでは法改正にならない |
| 業界団体の回答 | 事業者側の懸念や代替案 | 公的機関の決定ではない |
本稿は制度動向の一般的な解説であり、特定の暗号資産やサービスの推奨、個別案件への法律・投資助言ではありません。
MiCA見直しはまだ法改正ではない
2026年9月30日に終了した見直し協議
欧州委員会は2026年5月20日、暗号資産市場規則MiCAの対象者別協議を始め、回答を9月30日23時59分(中央ヨーロッパ夏時間)に締め切りました。協議は、MiCAの初期運用が目的に適合しているか、市場や技術の変化に制度が対応できているかを調べる手続きです。規制当局だけでなく、金融機関、暗号資産サービス提供者、業界団体などが意見を提出しました。
ここでいうMiCAは、EU域内で暗号資産の発行やサービスを扱う共通枠組みです。CASPは暗号資産サービス提供者を指し、取引、保管、交換など、認可対象となるサービスを提供する事業者です。既存業者向けの経過措置は最長でも2026年7月1日までとされ、その後はMiCA認可が基本になります。見直し協議は、この稼働中の枠組みをすべて白紙にする手続きではありません。
ESMAの回答は勧告であり施行済みルールではない
まなぶ「クリプ先生、ESMAが提案したなら、もう守らないといけないルールなんですか?」
クリプ「いや、今回は欧州委員会への勧告なんだ。現行MiCA、協議回答、将来の法案を分けて読めば混乱しにくいよ。」
ESMAが9月30日に公表した文書は、欧州委員会の協議に答えた提言です。ESMAは監督実務から見えた不足を示せますが、その回答だけでMiCAの条文を書き換えることはできません。欧州委員会が内容を検討し、必要なら法案を示し、EUの立法過程を経る必要があります。提案は途中で修正されたり、採用されなかったりする可能性もあります。
ニュースを読む際は、文書の動詞に注目してください。「提案した」「求めた」「支持した」は、通常「施行した」と同じではありません。事業者が現在の義務を調べるなら、現行規則、委任法令、監督当局のQ&A、認可条件を確認します。将来対応を準備するなら、それに加えて協議回答や法案を追います。この二つを同じチェック表に混ぜないことが重要です。
次の節目は2027年6月30日の欧州委員会報告
調査資料では、欧州委員会がMiCA第140条と第142条に関する報告を2027年6月30日までにまとめ、必要に応じて法改正案を添える工程が示されています。この報告は重要な節目ですが、報告日と新ルールの施行日は同じではありません。法案が示された場合も、審議、採択、公示、適用開始という後続過程があります。
実務では、①欧州委員会の報告、②法案の有無と条文、③議会・理事会での修正、④最終法令の適用日、⑤経過措置、の順で確認します。日付だけを見て先回りしてサービスを停止したり、反対に「まだ提案だから」と準備を放置したりせず、現在の義務と将来の変更可能性を別々に管理するのが安全です。
ESMA提言は規制強化と手続き簡素化を併記する
利用者に関わる六つの主要論点
ESMA提言の主要論点は、①インフルエンサーなど第三者を含む広告、②費用や利益相反の開示、③暗号資産の貸借とステーキング、④利用者をDeFiプロトコルへつなぐサービス、⑤MiCAに準拠しないステーブルコインに関するサービス制限、⑥トークン分類の六つです。以降のH2もこの順序に対応します。費用・利益相反は、利用者が実際に比較する利回りサービスの開示と合わせて扱います。
共通する狙いは、利用者が誰から何のサービスを受け、どのリスクと費用を負うのかを見えやすくすることです。暗号資産サービスは、取引画面、ウォレット、利回り表示、外部プロトコルへの接続が一つのアプリに並ぶことがあります。しかし、同じボタンから始まっても、相手方、資産の保管方法、損失時の責任は同じとは限りません。ESMAはこの境界を制度上明確にしようとしています。
白書通知と重複認可の簡素化案
見直しは規制強化一辺倒ではありません。ESMAは暗号資産白書の通知手続きや、すでに他の金融規制の下で認可を受けた事業者に生じる重複認可の簡素化も提案しています。情報を減らすというより、同じ確認の反復を避け、監督資源をリスクの高い領域へ振り向ける発想です。
簡素化には注意点もあります。通知の窓口や様式が減っても、白書の内容責任や利用者への説明責任まで消えるとは限りません。また、銀行や証券会社が既存認可を持つからといって、暗号資産固有の技術リスクへの対応が自動的に完了するわけでもありません。最終法令では、何を省略でき、何が残るかを条文単位で確認する必要があります。
暗号資産広告はインフルエンサーも規制強化の焦点になる
第三者による宣伝まで対象を広げる狙い
ESMAは、CASP自身が出す広告だけでなく、インフルエンサーや第三者による宣伝も焦点にしています。広告主と発信者が分かれていると、報酬関係や責任の所在が利用者から見えにくくなるためです。短い動画や投稿では、期待リターンが強調される一方、価格変動、ロック期間、手数料、元本損失の可能性が目立たないことがあります。
今後の案で確認すべきなのは、「広告」の範囲、CASPが第三者を選定・監督する義務、報酬関係の表示、リスク警告の形式、域外から届く発信の扱いです。単に投稿へ「PR」と付けるだけで足りるかは、最終条文次第です。利用者側は、発信者の人気ではなく、サービス提供者の認可、公式の商品説明、費用と引き出し条件を照合する習慣が役立ちます。
広告規制はリスクに応じた義務設計が焦点
現時点の答えは、企業規模による一律免除ではなく、広告の到達範囲や商品の複雑さに応じた義務が有力な検討軸で、具体的な線引きは未確定ということです。統一的な広告ルールは誤解を減らし得る一方、すべての投稿の事前審査や記録保存を求めれば、小規模事業者の負担は増えます。WH Partnersの回答は、中小企業への比例的な負担と競争可能な欧州市場を論点にしています。強い規制が必ず利用者保護を最大化するとは限らず、正規業者の撤退や、域外サービスへの移動が起きれば監督が難しくなる面もあります。
したがって重要なのは、企業規模だけで免除することではなく、広告の到達範囲、商品の複雑さ、想定損失、発信者との関係に応じて義務を設計できるかです。利用者保護、遵守費用、執行可能性の三つを同時に見る必要があります。
ステーキングと暗号資産貸借は開示ルールが焦点

費用・報酬・担保・損失可能性の開示案
まなぶ「ステーキングも貸し出しも、預けて報酬を受け取る点では同じに見えます。」
クリプ「仕組みとリスクは別物だよ。誰が資産を使い、報酬がどこから生まれ、損失を誰が負うかを分けて確認しよう。」
ESMAは、ステーキングと暗号資産貸借について、費用、リスク、報酬、担保、損失可能性を明確に開示する案を示しました。ステーキングは一般にネットワークの検証へ資産を用いる仕組みです。基礎から確認したい場合は、暗号資産ステーキングの仕組みを先に読むと、貸借との違いをつかみやすくなります。利用者がCASPへ預けるサービスでは、CASPがどのように資産を束ね、報酬を配り、手数料を差し引くかが加わります。貸借では、借り手の信用、担保価値、清算、再利用が中心になります。
画面に表示される年率だけでは比較できません。報酬が保証されるか、変動するか、いつ引き出せるか、アンボンディング期間はあるか、スラッシングや技術障害の損失を誰が負うか、担保不足時にどう清算するかを確認する必要があります。「利回り」という共通表示が、同じ法的権利や同じ安全性を意味するわけではありません。
顧客資産を使うステーキングの現行解釈
将来案と区別すべき現行解釈があります。ESMAのQ&Aによると、CASPが顧客の同意を得ていても、顧客暗号資産をCASP自身の利益だけのために自己勘定でステークすることは認められません。また、費用や手数料の開示が求められます。この点は、2026年の見直し提言を待って初めて生じる論点ではありません。
利用者は利用規約で、ステーキング主体、報酬の計算、CASP控除分、資産の移転権限、第三者への再委託、解約条件を探します。事業者は、顧客のためのサービスと自己利益の運用を分け、同意と記録を残す必要があります。ただし個別サービスが適法かどうかは、契約と運用事実を含めた専門的な確認が必要です。
EBAとESCBも貸借・ステーキングを課題視
EBAも、暗号資産貸借とDeFiプロトコルへのアクセス仲介を規制検討の課題に挙げました。ESCBも貸借とステーキングを取り上げています。複数機関が同じ領域を問題視していることは、検討の重要度を示しますが、各機関の提案が同じ条文になることを保証するものではありません。
EBA・ESMAの2025年共同報告は、EUのDeFi貸借を約18億ユーロ、DeFiステーキングを約36億ユーロと推計しました。これは当時の定義と基準に基づく市場把握であり、現在の残高や将来規模を保証する数字ではありません。制度設計では規模だけでなく、資産の支配、相手方、レバレッジ、損失波及の経路が重視されます。
DeFi接続規制:当局案と業界の懸念を比較

当局案:フロントエンドや仲介機能も見る
ESMAは、利用者をDeFiプロトコルへ接続する事業を新たな暗号資産サービスとして規制する案を示しました。DeFi自体の基礎はDeFi(分散型金融)の解説で確認できます。ここで焦点になるのは、スマートコントラクトそのものだけではありません。利用者が操作するウェブ画面、注文経路、ウォレット接続、手数料徴収、取引のルーティングなど、プロトコルへ到達するまでのサービスです。
同じプロトコルでも、利用者がコードへ直接アクセスする場合と、企業が運営する画面からアクセスする場合では、説明、選別、手数料、取引制限の主体が異なります。接続事業者を規制すれば、リスク説明や苦情対応の窓口を置きやすくなる反面、単なるソフトウェア提供者やウォレットまで広く含めると、開発や公開コードへの影響が大きくなります。対象範囲はまだ確定していません。
真に分散化された活動を判定する基準
まなぶ「DeFiと名乗っていれば、運営者がいないサービスという意味ですか?」
クリプ「名前だけでは決まらないよ。更新鍵、手数料、画面、ガバナンスなどを誰が実効的に支配しているかを見る必要があるんだ。」
MiCAでは「完全に分散化された方法で、仲介者なしに提供される」活動の扱いが問題になります。しかし「完全に分散化」の判定は簡単ではありません。コードが公開されていても、少人数が管理鍵を持ち、手数料率を変え、画面を停止し、資産を移せるなら、実効的な支配が残っている可能性があります。
反対に、開発者が過去にコードを書いたというだけで、現在の取引や利用者資産を支配しているとは限りません。ガバナンストークンが分散していても、投票参加が少数に偏る場合もあります。最終基準では、コードの更新権、フロントエンド、オラクル、手数料、資産保管、緊急停止、ガバナンス参加の集中度などを組み合わせて見ることが考えられます。
形式ではなく実効的な支配を見る考え方
マルタ金融サービス当局の議論文書も、肩書や形式的役割だけでなく、参加者の実効的な支配や影響力を見る考え方を示しています。この方法には、名目上の分散化で規制を避ける行為を捉えやすい利点があります。一方、どの程度の影響力で義務が生じるかが曖昧なら、開発者やインターフェース提供者は予測しにくくなります。
事業者は、誰が何を変更できるかを機能別に図示すると整理しやすくなります。利用者も「ノンカストディ」という表示だけで判断せず、承認したトークンの移転権限、管理鍵、アップグレード、障害時の窓口を確認します。非カストディは資産を直接保管しないという一要素であり、コードリスクや価格リスクが消える意味ではありません。
業界の懸念:コードではなく支配する仲介者を規制
識別可能な仲介者に義務を置く案
Global Digital Financeは、DeFiを一律に規制するのではなく、技術中立かつリスク基準の枠組みを求めています。中心は、利用者資産や取引を実際に支配する識別可能な仲介者へ義務を置く考え方です。誰がサービスを設計したかだけでなく、現在誰が資産移転を止め、条件を変え、収益を得るかを見ます。
この主張は監督対象をなくすものではありません。顧客資産を預かる、取引を裁量的に選ぶ、重要情報を独占する、フロントエンドで特定プロトコルへ誘導する主体には、その役割に応じた開示や管理を求める余地があります。争点は、活動のリスクに見合う義務をどこへ置くかです。
非カストディ型コードを対象外とする主張
DeFi Education Fundは「コードではなく仲介者を規制する」という立場から、利用者資産を支配しない非カストディ型コードを規制対象にすべきでないと主張しています。公開ソフトウェアに金融仲介者と同じ認可義務を課すと、実際に利用者と関係を持つ主体が不明確なまま、開発行為だけが萎縮するという懸念です。
ただし「非カストディ」というラベルだけで対象外になる制度にすると、支配機能を複数組織へ分散して見えにくくする余地が生まれます。最終制度には、資産保管だけでなく、更新権、取引選別、手数料、主要画面の支配も含めて実態を判定する基準が必要です。
利用者が見るべき五つの判定軸
業界回答は、過度に広い規制が開発者や流動性をEU外へ移す可能性を指摘します。一方、規制を置かなければ、利用者が企業提供の便利な画面を「管理者のいないDeFi」と誤解するおそれがあります。競争力と利用者保護は単純な二者択一ではありません。
比較するときは、①利用者資産の支配、②情報格差、③障害時の介入可能性、④収益の受け手、⑤義務を執行できる主体、の五点が役立ちます。これらが強いほど仲介機能も強いと評価しやすくなりますが、どの組み合わせを法的な閾値にするかは今後の課題です。
非準拠ステーブルコインと準備資産をめぐり意見が分かれる
| 主体 | 提案・重視点 | 主な懸念 |
|---|---|---|
| ESMA | 非準拠銘柄に関するCASPのサービス制限 | 認可市場を通じた規制の抜け道 |
| EBA | 発行・サービスの監督枠組み | 準拠状況と登録の明確化 |
| ESCB | 利息禁止の維持、準備資産の流動性設計 | 償還、決済、金融安定への影響 |
| 業界 | 比例的で執行可能な制限 | DEXや域外業者への流動性移転 |
ESMA・EBA:非準拠銘柄へのサービス提供を制限
ESMAは、MiCAに準拠しないステーブルコインに関連するサービスを規制業者が提供しないよう、明文のルールを置く案を示しました。狙いは、EUの認可・準備資産・償還などの枠外にある銘柄が、認可CASPを通じて広く流通する抜け道を防ぐことです。
ここで注意したいのは、個別銘柄の適否を名称だけで断定できないことです。MiCAでは、単一の法定通貨を参照する電子マネートークン(EMT)と、複数資産などを参照する資産参照トークン(ART)で枠組みが分かれます。EBAによると2026年9月1日時点でMiCA下のEMTは39件、認可済みARTは0件でした。この数字は基準日時点の登録状況であり、最新の公式登録簿で更新確認が必要です。
利息禁止の維持と準備資産ルールの再設計
ESCBはステーブルコインへの利息禁止を維持する立場を支持する一方、準備資産については固定的な銀行預金比率を流動性バケットへ置き換える案を示しました。これは規制を単純に緩める提案ではなく、償還需要に対応できる流動性をどの形で確保するかを再設計する考え方です。
準備資産では、額面の裏付けだけでなく、すぐ換金できるか、価格が下落しにくいか、保管先が集中していないかが重要です。銀行預金比率を固定すれば分かりやすい反面、銀行への集中や大規模償還時の問題が生じ得ます。流動性バケットには柔軟性がありますが、対象資産、期間、ヘアカット、ストレステストを明確にしなければ比較しにくくなります。
DEXや域外業者への流動性移転リスク
非準拠銘柄へのサービスを認可CASPで制限しても、トークン自体が公開ネットワーク上で移転できるなら、域外業者や分散型取引所(DEX)を経由して利用が続く可能性があります。ESRBの報告も、非準拠ステーブルコインがEU外業者やDEX経由で残り、規制外の流動性の影響を完全には遮断できない点を扱っています。
規制内市場から流動性が移ると、EU当局が取引実態を把握しにくくなり、利用者が保護の弱い経路へ向かうおそれがあります。反対に制限が曖昧なら、準拠発行者との公平性が損なわれます。最終制度では、取引、保管、移転、自己管理ウォレットとの送受信など、どのサービスをどこまで制限するかが重要です。
トークン分類の統一と今後の確認ポイント
ESMAが拘束力ある分類意見を求める理由
ESMAは、トークン分類について拘束力ある意見を出す権限を求めています。EU加盟国ごとに同じトークンの扱いが異なると、発行者やCASPは複数の判断へ対応しなければならず、利用者保護にも差が生じます。中央で拘束力のある見解を示せれば、規制の一貫性を高められる可能性があります。
特に難しいのは、複数の性質を持つハイブリッドトークンです。決済に使える一方で、収益や議決権に似た機能を持つ場合、MiCA対象の暗号資産か、MiFID上の金融商品かという境界が問題になります。分類は呼称や技術規格ではなく、権利、販売方法、契約、実際の機能から判断する必要があります。
MiCAとMiFIDの境界をめぐる業界の懸念
AFMEとICMAは、トークン化された金融商品とMiCA対象暗号資産の明確な区別を維持する必要性を訴えています。既存の株式や債券をDLT上で表したからといって、その経済的性質が失われるわけではありません。MiFID金融商品をMiCA側へ移すと、既存の証券市場ルールとの整合性が崩れ、法的不確実性が増すとの懸念です。
拘束的意見は統一性を高める反面、誤分類の影響がEU全域へ広がる可能性があります。そのため、発行者の説明だけに頼らず、権利の実態を調べる手続き、当事者が意見を述べる機会、見直しや不服申立ての仕組みが重要になります。権限を集中させるか否かだけでなく、判断品質を支える過程を見るべきです。
欧州委員会報告と最終法令で確認すべきこと
今後は、欧州委員会の2027年6月30日までの報告を起点に、法案が出るかを確認します。法案が出たら、DeFi接続サービスの定義、真に分散化された活動の基準、広告主と第三者発信者の責任、貸借・ステーキングの開示項目、非準拠ステーブルコインへの禁止範囲、ESMA分類権限を条文で比べます。
利用者は、利用中サービスのEU法人名と認可、費用、資産の保管主体、外部プロトコルへの接続、ステーブルコインの発行者と登録情報を定期的に確認します。市場規模や認可件数は基準日と定義で変わるため、古い数字をそのまま適用しないことも大切です。
現在の法令に基づく対応表と、提案段階の影響分析は分けて更新します。機能ごとに広告、保管、ステーキング、貸借、DeFi接続を分解し、白書通知、既存金融ライセンスとの重複、トークン分類の手続きを別欄で管理すると、未確定案を現行義務と取り違えにくくなります。
初心者がニュースを確認するための実践手順
制度ニュースを見たら、最初に発信主体を確認します。欧州委員会は政策提案と執行、ESMAは証券市場、EBAは銀行分野の監督調整を担い、ESCBは中央銀行の立場から金融安定や決済を見ます。同じ「EU当局」でも役割が違うため、発言の法的効果も同じではありません。業界団体や法律事務所の回答は、実務上の懸念を知る資料として有用ですが、公的機関の決定ではありません。
次に、資料の種類を確認します。協議文書は質問を示すもの、協議回答は回答者の提案、報告書は調査結果、法案は審議の出発点、最終規則は採択された条文です。さらに、採択済みでも適用開始前の場合があります。記事の日付だけで判断せず、文書名、公開日、採択状況、適用日を一組でメモすると、「提案」と「義務」を取り違えにくくなります。
三つ目は、自分がどの立場で関係するかを分けることです。個人利用者なら、利用するCASPの認可、広告と公式説明の差、保管者、費用、引き出し条件を見ます。事業者なら、提供機能ごとに取引、保管、ステーキング、貸借、DeFi接続、広告を分解し、現在の認可範囲と変更候補を対応させます。トークン発行者なら、白書、分類、準備資産、償還、販売地域を確認します。一つの企業が複数の立場を持つ場合は、役割ごとに表を分けます。
四つ目は、名称より実態を見ることです。「DeFi」「分散型」「ノンカストディ」「ステーブル」「利回り」といった言葉は、法的な結論を自動的に示しません。誰が管理鍵を持つか、資産を移せるか、条件を変更できるか、報酬を受け取るか、損失時の請求先はどこかを確認します。ステーブルコインの仕組みを先に整理したい場合は、ステーブルコインの基礎解説も参考になります。
最後に、更新日を決めます。欧州委員会報告の公表時、法案提出時、議会・理事会の合意時、最終法令公示時、適用開始前に見直せば、古い理解のまま運用するリスクを減らせます。個別銘柄の登録状況は、記事中の件数ではなく、その時点の公式登録簿で確認します。サービスの利用規約が変わった場合も、事業者の告知と法令の原文を分けて読みます。
MiCA見直しで混同しやすい用語
CASPは暗号資産サービス提供者であり、すべてのブロックチェーン開発者を指す言葉ではありません。EMTは単一の法定通貨の価値を参照する電子マネートークン、ARTは複数の資産や権利などを参照して価値の安定を目指す資産参照トークンです。DEXは一般にスマートコントラクトで交換する仕組みを指しますが、画面や管理機能まで完全に分散しているとは限りません。
MiFIDはEUの金融商品市場規制の枠組みで、株式や債券などの金融商品に関係します。トークン化は権利をDLT上で表現する技術的な形であり、それだけで元の権利がMiFIDの外へ移るわけではありません。MiCAとMiFIDの境界が重視されるのは、同じデジタル形式でも適用される開示、取引、保管、監督の体系が変わり得るからです。
「準拠」と「安全」も別の概念です。MiCAの要件に準拠し認可や登録を受けていても、価格変動、技術障害、相手方の破綻、秘密鍵の事故がなくなるわけではありません。反対に、非準拠という表示だけで個別の違法性を即断することもできません。誰にどのサービスをどの地域で提供しているか、適用条文と当局判断を確認する必要があります。
結論として、MiCA見直しは「規制が一気に厳しくなった」という出来事ではなく、初期運用で見えた境界を調整する政策過程です。ESMAは保護強化と簡素化を併記し、EBA、ESCB、業界はそれぞれ異なる優先順位を示しています。確定事項と提案を分け、最終法令と適用日まで追うことが、利用者にも事業者にも最も実務的な対応です。
編集方針・更新履歴:本記事は2026年10月5日時点の入力調査に基づき、公的機関の一次資料を事実確認の中心に置き、業界・法律実務家の資料は立場のある意見として区別して編集しました。同日、ESMAの協議回答公表後の内容へ更新しています。個別トークンの適法性、税務、投資判断は、最新の公式資料と必要に応じた専門家の助言で確認してください。